梅月堂 浜町本店が100周年|シースクリームの歴代と、松竹梅から始まった菓子店の物語
浜町のアーケードにある梅月堂の本店は、長崎で育った人なら、一度は前を通ったことがある店でしょう。誕生日のケーキや手土産に、この店の「シースクリーム」を選んだ記憶がある方も多いのではないでしょうか。
その本店が、2026年に、浜町で100周年を迎えました。10月23日にはリニューアルオープンし、25日までの3日間、歴代のシースクリームを復刻して売る創業祭が開かれました。復刻の販売は終わりましたが、この店の物語は、まだ続きの話題を残しています。この記事では、梅月堂の歩みと、シースクリームが生まれた背景、そしていま本店で受け取れる記念品について、2026年11月1日時点の情報でまとめます。
看板商品
シースクリーム。昭和30年ごろに生まれた、長崎のなつかしい洋菓子です。
創業
1894年(明治27年)、大浦町で和菓子司として始まりました。
本店
長崎市浜町7-3。2026年10月23日にリニューアルしました。
いま受け取れる記念品
5,000円以上の購入で、波佐見焼の記念プレート(12月15日まで、なくなり次第終了)です。
「もう終わってしまったの?」という声に
まず、気になる点を先にお伝えします。
復刻シースクリームは、3日間だけの販売だった
歴代のシースクリームの復刻販売は、10月23日から25日までの3日間限定でした。中には、1時間で売り切れた種類もあったと報じられています。復刻の初代は、浜町本店だけの販売でした。この期間に買えなかった人は、次にいつ復刻されるのかが、気がかりでしょう。
梅月堂の本田典子副社長は、二代目の人気が高く、要望に応えて、創業祭のときに年1回だけ復刻していると説明しています。次の復刻の予定は、2026年11月1日時点で、公表されていません。
記念プレートも、数に限りがある
浜町本店で5,000円以上を購入すると、波佐見焼の100周年記念プレートが1枚もらえます。配布は10月23日から12月15日までですが、「なくなり次第終了」です。期間の最後まで残っているとは限りません。欲しい人は、早めに行くほうが確実です。
「100周年」の数え方が、少し分かりにくい
梅月堂の創業は1894年です。2026年は、創業から132年目にあたります。それなのに、なぜ100周年なのでしょうか。
今回の100周年は、浜町に店を構えてからの年数です。梅月堂の沿革では、浜町へ移ったのは昭和2年(1927年)ですが、2026年の報道では、1926年とされています。いずれにしても、約100年前に浜町へ移り、同じ場所で店を続けてきた、という意味での節目です。副社長も、浜町で100年続いたことへの感謝を語っています。
では、その100年と、132年の歴史には、どんな物語があったのでしょうか。
松竹梅の店のひとつとして、大浦町で始まる
梅月堂の創業は、1894年(明治27年)です。長崎市大浦町で、和菓子司として店を開きました。創業者は本田兼作で、もともとは農家の出身だったと、梅月堂の沿革に書かれています。
面白いのは、店名の由来です。島原から長崎に移ってきた3人の和菓子職人が、「松」「竹」「梅」の文字をそれぞれ冠した店を開きました。梅月堂は、そのうちの一軒だとされています。店は市内の数か所を移転したため、創業当時の資料は残っていないそうです。
その後、店は浜町へ移ります。移転の経緯をたどると、大浦町から石灰町、船大工町へと店を移し、1927年から現在の浜市商店街に店を構えています。移転当初の看板は「梅月堂ベーカリー」でした。
和菓子から洋菓子へ、そして昭和30年ごろの転機
梅月堂の歴史で、大きな転機になったのが、洋菓子への挑戦です。二代目の本田藤四郎が洋菓子に興味を持ち、ドイツ人のシェフから焼菓子の作り方を教わったと伝えられています。そして昭和30年(1955年)ごろ、本格的な洋菓子店として再出発しました。
洋菓子の材料が手に入りやすくなったことが、そのきっかけだったと報じられています。
二度、営業を止めた経験
梅月堂の沿革には、営業を止めた時期が2回あると記されています。1回目は太平洋戦争のころ、2回目は1982年(昭和57年)の長崎大水害です。どちらも、街全体が大きな被害を受けた出来事でした。そのたびに店を再開し、現在まで続いていることが、この店の底力を物語っています。
シースクリームという発明
梅月堂の看板商品が、シースクリームです。昭和30年ごろに生まれ、長崎で約70年にわたって愛されてきたと報じられています。
生クリームを、長崎で初めて
シースクリームは、バタークリームが主流だった時代に、長崎で初めて生クリームを取り入れて作られたと紹介されています。初代は、楕円形のブッセ生地にカスタードクリームをはさんだ菓子でした。発売当初から人気を集めたそうです。
名前をめぐる、ちょっとした勘違い
「シース」という名前には、面白い話が伝わっています。形が豆のさやに似ていたため、英語で「さや」にあたる言葉を探したところ、刀の「鞘(sheath)」と取り違えて、「シース」と名付けてしまった、というものです。数十年後に間違いに気づきましたが、名前が定着していたため変えられず、のちに独自の綴り「Ceece」を使うようになり、梅月堂オリジナルの名称になったといわれています。
歴代のシースクリーム
歴代の特徴は、次のとおりです。世代の数え方は資料によって違い、店の特設サイトでは現在が4代目、報道では2000年から売られている現在の形が3代目とされています。ここでは、報道の整理に沿って紹介します。
| 世代 | 特徴 |
|---|---|
| 初代 | ブッセ生地をチョコレートでコーティングし、サクランボをのせた丸い形。68年前まで販売。 |
| 二代目 | 生地がスポンジケーキに変わり、黄桃とパイナップルをのせた形。歴代で最も長く販売。 |
| 現在の定番 | 2000年から販売されているスタイル。 |
現在のシースクリームは、スポンジ、カスタード、生クリーム、黄桃、パイナップルでできています。創業祭の試食では、初代について「カスタードクリームとブッセの生地が最高の組み合わせ」「チョコレートはパリッとして、クリームはたっぷり」という声が紹介されました。
「ハニーケーキ」と、お楽しみ袋
創業祭では、1931年ごろのレシピをもとにした「ハニーケーキ」入りの「お楽しみ袋」も売り出されました。焼き菓子の詰め合わせで、3,000円相当の商品が税込2,160円と案内されていました。昔の菓子を現代によみがえらせる試みが、100周年の節目に重なっています。
リニューアルした本店と、青い食器の記憶
2026年10月23日、浜町本店は、外観と内装を新しくしました。テーマは「100年の思いをはせる、落ち着いた空間」です。店内には、かつての店構えの写真や、アンティークの家具が飾られています。
記念プレートにも、ひとつの物語があります。波佐見焼のプレートは、本店の2階の喫茶で長く親しまれてきた食器「ブルーダニューブ」の青をイメージしています。喫茶店の器の色が、記念品として戻ってくるわけです。長く通ってきた人にとっては、ひとつの記憶がよみがえる仕掛けといえるでしょう。
「南蛮おるごおる」にみる、長崎らしさへのこだわり
梅月堂には、もうひとつ、長く愛される菓子があります。「南蛮おるごおる」です。ラングドシャを巻いた菓子で、約60年前に生まれました。パッケージのもとになった絵は、版画家の田川憲さんの「西洋骨董店にて」だそうです。
本田副社長は、長崎にしかない食文化や、洋と和が混ざった感じを、お菓子で表現し、パッケージで物語を伝えたいと話しています。県の内外の人に楽しんでもらえるものを作りたい、という考えです。
2階の喫茶「サロン・ド・フィーヌ」
浜町本店の2階には、喫茶の「サロン・ド・フィーヌ」があります。1階で販売しているケーキを注文でき、ドリンクとのセットで楽しめます。営業時間は11時から17時30分まで(ラストオーダーは17時)です。
この喫茶は、かつては長崎の文化人が集まる場所であり、若者のデートスポットでもあったと紹介されています。「長崎人のハイカラスポット」とも呼ばれました。版画家の田川憲さんもこの店に通い、その縁から、銘菓「南蛮おるごおる」のパッケージに、田川さんの版画が使われるようになったそうです。
いまの季節に味わえるもの
梅月堂のお菓子には、季節で楽しむものがあります。
- 桃カステラ:長崎の縁起菓子として知られ、10月から5月下旬までの期間限定で販売されます。
- 喫茶の季節限定セット:9月から11月は「ノア・オ・フォレ」、12月は「シュトレンセット」が案内されています。
- 南蛮おるごおる:プレーンとショコラの2種類があります。
シースクリーム目当てで訪れる人が多い店ですが、時期に合わせた菓子を選ぶと、季節の移り変わりを味わえます。
創業祭の3日間に起きたこと
10月23日の朝から、梅月堂の全店舗で創業祭が始まりました。本店は同じ日にリニューアルを済ませ、店内には昔の店構えの写真が飾られました。目玉の復刻シースクリームは、完売が見込まれていたため、午前10時の開店直後の来店が呼びかけられていました。実際に、1時間で売り切れた種類もあったと伝えられています。
復刻の初代は、ブッセ生地がふんわりとして、チョコレートはパリッとし、クリームはたっぷり、と紹介されています。二代目の復刻は、全店舗の販売でした。副社長は、昔のケーキのおいしさを楽しんでほしい、と語っています。懐かしい味を、もう一度味わいたいという声に応えた企画だったことが分かります。
贈り物としての梅月堂
浜町の本店で買った菓子は、地元の人の間で、誕生日のケーキや手土産としても選ばれてきたと紹介されています。長崎の人に渡す贈り物なら、シースクリームのほか、桃カステラや南蛮おるごおるなど、長崎らしさのある菓子がそろっています。
行く前に確認したいこと
本店の情報を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 長崎市浜町7-3 |
| 営業時間 | 1階は10時から19時まで、2階の喫茶は11時から17時30分まで(ラストオーダー17時) |
| 駐車場 | なし(近くに有料駐車場があります) |
| 記念プレート | 5,000円以上の購入で1枚。10月23日から12月15日まで。なくなり次第終了 |
予約が必要かどうかについては、案内に記載がありません。ケーキの購入は、店頭で行う形です。
梅月堂の歩みを、年表で見る
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1894年(明治27年) | 大浦町で、和菓子司として創業 |
| 1927年(昭和2年) | 浜町へ移転(2026年の報道では1926年とも) |
| 1955年(昭和30年)ごろ | 本格的な洋菓子店として再出発。シースクリームが誕生 |
| 1982年(昭和57年) | 長崎大水害で営業を中断 |
| 2000年 | 現在の定番とされるシースクリームの販売が始まる(報道) |
| 2024年 | 創業130周年 |
| 2026年10月23日 | 浜町本店がリニューアル。100周年創業祭 |
100年の先へ
梅月堂は、和菓子司として始まり、洋菓子の店へ姿を変え、戦争と水害で営業を止めながらも、浜町に100年、店を構え続けてきました。シースクリームも、初代から現在まで、少しずつ姿を変えながら、長崎の人の記憶に寄り添ってきました。
記念プレートは、12月15日までです。まだ間に合う今のうちに、浜町を歩くついでに、本店をのぞいてみませんか。リニューアルした店内の写真と、なつかしい味のケーキは、この街で暮らす私たちが、100年の時間を共有している証しでもあります。
浜町へは、路面電車の「浜町アーケード」の停留場が近く、買い物のついでに立ち寄りやすい場所です。